TW3「エンドブレイカー!」のキャラブログ。
PBW、TWと言った単語に興味のない方は回れ右推奨。
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待ち望んだ言葉は来た。
……後は。
……後は。
その言葉は、漸くと言って良い時間を掛けて吐き出された。
「退院できそうです」
医師は正直、不本意そうだった。
青年がしつこく食い下がり、宥め賺した結果であった。
回復自体は順調で、立って歩くのには支障はない。日常生活において問題にはならないだろう。
問題となったのは、別のもの。
けれど青年は満足そうに、帰り支度を始めた。
彼にとってそれは、自分で為さねば意味の無いものだから。
……息を、吐く。
此処へ来る時に身に付けていたものは、凡そ服とは呼べない物と成り果てていた。
此処へ来る迄の記憶は、本音を言えば所々飛んでいて辻褄が合わない。
握り締めた手に、爪が食い込む。
彼に尋ねれば応えただろう。――『負けただけだ』、そう、静かに。
唯、生を諦める事が出来なかっただけだと。
其れを生き恥と呼べば、怒る者が居る事を彼は知っている。
帰る場所が在る、迎えてくれる人が居ることを、恥ずかしいなどと彼は思わなかった。
それを諦める事はとても、出来そうになかった。
「……」
彼は、顔を上げた。
背に向けた窓から風が呼ぶ。
目の前の扉は黙ったまま。
けれど、
「……どうぞ」
彼は少し笑って、声を掛けた。
ノックが聴こえるほんの少し前だった。
「……」
きぃ、蝶番が鳴って、おずおずと扉が開いていく。
ふわりと揺れる淡い金髪は相も変わらず甘そうに、柔らかく。
戸惑った色の灰桃の双眸は、少し間を置いて上向いた。
すっかり身支度の整った彼の姿を、瞼に収めて。
彼女は嬉しそうに目を細めた。
「もう良いの?」
「これ以上寝てたら、逆に病気になる位にはな」
冗句めいて。
二人は揃って口角を上げた。
疾うに、知っていた。
彼らが同じ様に、非日常に身を染めて日々を生きている事。
互いの瞳には何も――そう、悲劇も喜劇も幸福すらも、映ることが終ぞ無かった。
そうして彼がまた、非日常の世界に帰って行く事も。
内緒話の様に病室に持ち込んだ、彼の黒鞘の太刀は、良く手入れされて其処に在った。
手元に戻るとは思っていなかったが、幸運にも再び手にする事が出来たと、彼は笑う。
舞い散る風の中で、彼女の小さな手が伸ばされた。
少し硬い銀糸の髪に、ぽふりと。
「……無事に、おかえり」
一瞬の瞠目。
天藍映した静謐の瞳が、勝気に躍る。
「ただいま」
そうして、やっぱり知ってたんじゃねえか、と。可笑しそうに彼が呟いた。
「――なあ。名前は」
風が呼んでいる。
「……ロレッタ。ロレッタ・マリーナフカよ」
相対する彼女が微笑む。
つい、と泳いだ手が、淡金の髪を一房すくいあげて。
「……Enchante」
そう、怖いくらい他人行儀に、金糸の甘い花香に口付けた彼は、リウェス・グラファイトと名乗った。
[終]
「退院できそうです」
医師は正直、不本意そうだった。
青年がしつこく食い下がり、宥め賺した結果であった。
回復自体は順調で、立って歩くのには支障はない。日常生活において問題にはならないだろう。
問題となったのは、別のもの。
けれど青年は満足そうに、帰り支度を始めた。
彼にとってそれは、自分で為さねば意味の無いものだから。
……息を、吐く。
此処へ来る時に身に付けていたものは、凡そ服とは呼べない物と成り果てていた。
此処へ来る迄の記憶は、本音を言えば所々飛んでいて辻褄が合わない。
握り締めた手に、爪が食い込む。
彼に尋ねれば応えただろう。――『負けただけだ』、そう、静かに。
唯、生を諦める事が出来なかっただけだと。
其れを生き恥と呼べば、怒る者が居る事を彼は知っている。
帰る場所が在る、迎えてくれる人が居ることを、恥ずかしいなどと彼は思わなかった。
それを諦める事はとても、出来そうになかった。
「……」
彼は、顔を上げた。
背に向けた窓から風が呼ぶ。
目の前の扉は黙ったまま。
けれど、
「……どうぞ」
彼は少し笑って、声を掛けた。
ノックが聴こえるほんの少し前だった。
「……」
きぃ、蝶番が鳴って、おずおずと扉が開いていく。
ふわりと揺れる淡い金髪は相も変わらず甘そうに、柔らかく。
戸惑った色の灰桃の双眸は、少し間を置いて上向いた。
すっかり身支度の整った彼の姿を、瞼に収めて。
彼女は嬉しそうに目を細めた。
「もう良いの?」
「これ以上寝てたら、逆に病気になる位にはな」
冗句めいて。
二人は揃って口角を上げた。
疾うに、知っていた。
彼らが同じ様に、非日常に身を染めて日々を生きている事。
互いの瞳には何も――そう、悲劇も喜劇も幸福すらも、映ることが終ぞ無かった。
そうして彼がまた、非日常の世界に帰って行く事も。
内緒話の様に病室に持ち込んだ、彼の黒鞘の太刀は、良く手入れされて其処に在った。
手元に戻るとは思っていなかったが、幸運にも再び手にする事が出来たと、彼は笑う。
舞い散る風の中で、彼女の小さな手が伸ばされた。
少し硬い銀糸の髪に、ぽふりと。
「……無事に、おかえり」
一瞬の瞠目。
天藍映した静謐の瞳が、勝気に躍る。
「ただいま」
そうして、やっぱり知ってたんじゃねえか、と。可笑しそうに彼が呟いた。
「――なあ。名前は」
風が呼んでいる。
「……ロレッタ。ロレッタ・マリーナフカよ」
相対する彼女が微笑む。
つい、と泳いだ手が、淡金の髪を一房すくいあげて。
「……Enchante」
そう、怖いくらい他人行儀に、金糸の甘い花香に口付けた彼は、リウェス・グラファイトと名乗った。
[終]
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使用されているイラストは、株式会社トミーウォーカーのPBW『エンドブレイカー!』用のイラストとして、レクサスPLが作成を依頼したものです。イラストの使用権は発注者に、著作権は各イラストマスター様に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。