TW3「エンドブレイカー!」のキャラブログ。
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子供みたいだなあって、思った
古い竪琴を持つ手は震えてた。
風が鳴って僕は振り向いたけど、辺りは荒涼な大地が広がるだけ。
――都市国家中層、小さな町の外れ。
そこには嘗て、一件の家がひっそりと建っていた。
今はもう何も無いけれど。
僕が全てを失った代わり、傷を刻まれ力を得た夜。
住む者の居なくなった家は空き家となり、暫く後に火が出て燃えてしまったと風の噂で聞いた。
あんな、何も無い場所に放火など、と。笑った覚えがある。
上手く笑えていた自信はないが、それを見ていた者もいないだろう。
もう二度と戻るつもりはなかったし、この土を踏む事もないと思っていたから。
だから言葉に困っている。
昔、家の在った近くにぽつりと、石が置いてある。
名を刻まれた其れは墓標と呼ぶべきもの。
ただ、僕がそれを目にするのは初めてだった。
賊に斬られた後、助け出された施療院で、父と母は助からなかったと聞かされて。
弟は見つかっていないとも、聞いて
町長と他数名が家の傍に墓を建ててくれたと医者は言っていた。
僕は墓参りもせず、一言の礼も言わずに、施療院を飛び出した。
それがもう、10年も前の事。
町の様子は変わっていたし、世話になった施療院は場所を移ったのか、なくなっていた。
随分前に町を出た、強盗事件の生き残りの事など、覚えている者も居ないだろう。
少なくとも僕は、忘れようと必死になっていた所為か。
近所に住んでいたはずの人の顔も声すらも、ちっとも覚えていなかった。
結局、挨拶の仕方も思い出せないまま、僕は墓石の前に立った。
立ち竦むのは乾いた土の上。墓石は少し煤けている。
花束でも持ってくるべきだったと今更思い至って、溜息を吐いた。
10年。一人で生きようとして、もう誰も失くさないように。
誰も傍に置かないと決めて、ずっと。
深く関わらないように生きてきた。
その全てはこの数ヶ月で、見事に覆ってしまったけれど。
何と言おうか。
迷ったまま、静かに膝を突く。
――早くお前に嫁さんが出来れば良いのになあ。
ふと思い出す声。父が楽しそうに言ったのはいつだったか。
「……父さん、好きな人できたよ。残念ながらお嫁さんじゃないけど」
自身も男兄弟で、生まれたのも息子が二人。娘が出来たらさぞ華やかだろうと。
そんな話を聞いて、気が早いと呆れたのは母だった。
「この竪琴覚えてる? 母さん。まだ、弾けるよ」
抱えていた竪琴を一弦、爪弾く。
誕生日のお祝いにと貰ったこの琴は、得意な町民や父に教わって練習したもの。
幾年となく弾き続け、幾度と切れた弦を張り直して。
武器として使える事も知っていたけれど、一度も殺める道具にすることなく
ただ歌い奏でる為に。
「……」
その竪琴を、静かに墓石へ立て掛けた。
置いて行くのは忘れる為じゃない。
「……僕は、外へ行こうと思うんだ。此処じゃなくて、遠くへ」
手を伸ばして、知らず震えた指先で、石を覆う砂を払う。
帰れるのは何時になるか、生きて帰れるかすら――否。
否定的な言葉など、口にするべきではないから。
「帰ってきたら、また来るよ。今度はちゃんと、花を持って」
記憶の中の母が好きだと言っていたのは、小さな白い花。
名前も覚えていないけれど、探せばきっと見つかる筈だ。
「あのね。……復讐とかも、全部。全部終わって。――もう、終わったと思ってた。
……でも、まだ。……僕は僕を赦せる日を、待たなきゃいけないみたい」
力を得たのは、全てを失った後。
どんなに強くなっても、喩え敵のあの男をこの手で殺めたとしても。
それで何かが戻る訳ではないのを知っていたし、空しいのも解っていた。
全てが終わったその跡を、惰性で生きているだけだった。
けれどどうやら、このままでは居られないらしい。
「――終わっていないみたいだから。……僕は行くよ」
約束は続いている。
この道が途切れるまで続くのだろうから。
「いってきます」
古い竪琴を持つ手は震えてた。
風が鳴って僕は振り向いたけど、辺りは荒涼な大地が広がるだけ。
――都市国家中層、小さな町の外れ。
そこには嘗て、一件の家がひっそりと建っていた。
今はもう何も無いけれど。
僕が全てを失った代わり、傷を刻まれ力を得た夜。
住む者の居なくなった家は空き家となり、暫く後に火が出て燃えてしまったと風の噂で聞いた。
あんな、何も無い場所に放火など、と。笑った覚えがある。
上手く笑えていた自信はないが、それを見ていた者もいないだろう。
もう二度と戻るつもりはなかったし、この土を踏む事もないと思っていたから。
だから言葉に困っている。
昔、家の在った近くにぽつりと、石が置いてある。
名を刻まれた其れは墓標と呼ぶべきもの。
ただ、僕がそれを目にするのは初めてだった。
賊に斬られた後、助け出された施療院で、父と母は助からなかったと聞かされて。
弟は見つかっていないとも、聞いて
町長と他数名が家の傍に墓を建ててくれたと医者は言っていた。
僕は墓参りもせず、一言の礼も言わずに、施療院を飛び出した。
それがもう、10年も前の事。
町の様子は変わっていたし、世話になった施療院は場所を移ったのか、なくなっていた。
随分前に町を出た、強盗事件の生き残りの事など、覚えている者も居ないだろう。
少なくとも僕は、忘れようと必死になっていた所為か。
近所に住んでいたはずの人の顔も声すらも、ちっとも覚えていなかった。
結局、挨拶の仕方も思い出せないまま、僕は墓石の前に立った。
立ち竦むのは乾いた土の上。墓石は少し煤けている。
花束でも持ってくるべきだったと今更思い至って、溜息を吐いた。
10年。一人で生きようとして、もう誰も失くさないように。
誰も傍に置かないと決めて、ずっと。
深く関わらないように生きてきた。
その全てはこの数ヶ月で、見事に覆ってしまったけれど。
何と言おうか。
迷ったまま、静かに膝を突く。
――早くお前に嫁さんが出来れば良いのになあ。
ふと思い出す声。父が楽しそうに言ったのはいつだったか。
「……父さん、好きな人できたよ。残念ながらお嫁さんじゃないけど」
自身も男兄弟で、生まれたのも息子が二人。娘が出来たらさぞ華やかだろうと。
そんな話を聞いて、気が早いと呆れたのは母だった。
「この竪琴覚えてる? 母さん。まだ、弾けるよ」
抱えていた竪琴を一弦、爪弾く。
誕生日のお祝いにと貰ったこの琴は、得意な町民や父に教わって練習したもの。
幾年となく弾き続け、幾度と切れた弦を張り直して。
武器として使える事も知っていたけれど、一度も殺める道具にすることなく
ただ歌い奏でる為に。
「……」
その竪琴を、静かに墓石へ立て掛けた。
置いて行くのは忘れる為じゃない。
「……僕は、外へ行こうと思うんだ。此処じゃなくて、遠くへ」
手を伸ばして、知らず震えた指先で、石を覆う砂を払う。
帰れるのは何時になるか、生きて帰れるかすら――否。
否定的な言葉など、口にするべきではないから。
「帰ってきたら、また来るよ。今度はちゃんと、花を持って」
記憶の中の母が好きだと言っていたのは、小さな白い花。
名前も覚えていないけれど、探せばきっと見つかる筈だ。
「あのね。……復讐とかも、全部。全部終わって。――もう、終わったと思ってた。
……でも、まだ。……僕は僕を赦せる日を、待たなきゃいけないみたい」
力を得たのは、全てを失った後。
どんなに強くなっても、喩え敵のあの男をこの手で殺めたとしても。
それで何かが戻る訳ではないのを知っていたし、空しいのも解っていた。
全てが終わったその跡を、惰性で生きているだけだった。
けれどどうやら、このままでは居られないらしい。
「――終わっていないみたいだから。……僕は行くよ」
約束は続いている。
この道が途切れるまで続くのだろうから。
「いってきます」
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使用されているイラストは、株式会社トミーウォーカーのPBW『エンドブレイカー!』用のイラストとして、レクサスPLが作成を依頼したものです。イラストの使用権は発注者に、著作権は各イラストマスター様に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。